ある日のランチと消費税
先日、友人たちと家の近くのランチに行ってきました。
駐車場も十分にあり、入りやすいお店です。
店内のインテリアも素敵で、通路のスペースはゆったりととってあり、落ち着ける空間です。
レジ近くでは、週一で仕入れてくるという、イヤリングやピアスなどのアクセサリーも販売しています。
そのアクセサリーを店員さんが身に着けていらっしゃって、「こういうコーディネート、可愛いなぁ」と実際に目の当たりにして、購買意欲がかきたてられました!
ちょっと見えにくいですが、購入したイヤリングをさっそくつけてみました。
店員さんのものとは違いますが、店員さんの方が似合っていらっしゃった気がします(笑)
消費税目線では
こんなとき、また職業病で、「このお店がもし消費税の課税事業者で簡易課税を選択していたら?」と考えてしまいます。
結構人気のお店なので、客単価と客数から考えて課税事業者であることは間違いなさそうです。
消費税の計算方法は本則課税と簡易課税がありますが、基準期間の課税売上が5,000万円未満なら簡易課税を選択することができます。
これが選択できる本来の意図は、売上が大きくない中小事業者の事務負担軽減への配慮ですが、実際は会計ソフトで日々、消費税の区分の入力さえしっかりしていれば本則課税でもそれほど大きな負担ではありません。
ですので実際は、本則課税と簡易課税でそれぞれ消費税の納税額をシミュレーションしてみて、いずれか有利な方を選択する、というのが通常です。
ただし注意点は、その期が始まってしまってからシミュレーションしたのでは間に合わず、簡易課税の方が消費税が安くなるようなら、その期が始まる前に届出をしなければなりません。本則課税は届出は不要ですが、簡易課税を選択していた人が本則課税に戻るときは届出が必要です。
上記届出はいずれも、その期が始まる前が期限なので予測を立てないといけない分、それが少し難しいところですね。
簡易課税の場合は、売上の種類(事業)に応じて、計算に採用する率(みなし仕入率)が変わります。
店内で飲食のみのお店でしたらすべて第四種事業に該当して1本で計算できますが、このカフェのように雑貨を販売していたり、店内で製造したスイーツなどをお土産としてテイクアウトできたりするお店もあります。
そんなときは、メインの第四種事業が全体の売上の75%以上を占めていればその第四種事業のみなし仕入率ですべて計算「できる」という特例もあります。
「できる」規定ですので、ちゃんと第四種事業と、雑貨売上やテイクアウト売上と分けて経理していればそれぞれの売上にそれぞれのみなし仕入率を掛けて計算することももちろんできます。むしろそちらが原則です。
雑貨売上は第二種事業(もしアクセサリーを買う人が事業者で、このお店から仕入れる場合は第一種事業ですが、基本は普通の個人の人が多いですよね)、テイクアウト売上は店内製造なら第三種事業です。
第四種事業より第三種事業、第二種事業の方が有利ですので、この場合は区分して計算する方が有利ですね。
ちなみに、10月に消費税増税が予定されていて、その10月1日を含む課税期間からはこのみなし仕入率が若干変わり、第三種事業である農業、林業、漁業のうち消費税の軽減税率が適用される飲食品の譲渡を行う事業を第二種事業とし、そのみなし仕入率は80%(現行70%)が適用されます。 カフェには関係ありませんが。
お味噌汁がとても美味しいランチでした。
今後の消費税は?
日本の消費税の制度は、ゆくゆくは海外でも多く採用されている「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」に移行します。
ただ、現行制度から急にインボイス制度に、となると周知期間も十分にとれませんし事業者の方たちの準備期間が足りません。
【移行スケジュール】
現行制度 |
2019年10月~ インボイス制度準備期間 |
2023年10月~ インボイス制度本格実施 |
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税額計算の方法 (売上関係) |
割り戻し計算 | 同左 |
適格請求書の税額を積み上げ 又は ※割り戻し計算 |
請求書等の発行 (売上関係) |
免税事業者も消費税上乗せの請求書OK | 同左 | 免税事業者は消費税上乗せの請求書(適格請求書等)を発行できない |
仕入税額控除 (仕入関係) |
請求書等の保存必須 | 同左 |
適格請求書等の保存必須 (3年間は免税事業者の請求書でも消費税80%控除、さらに3年間は50%控除、それ以降はゼロ) ※上で割り戻し計算を選択したなら、仕入の計算の方も割り戻し計算必須 |
税額計算の特例 |
・軽減税率対象売上のみなし計算(売上は4年間、仕入は1年間) ・簡易課税の事後選択 |
つまり、インボイス制度が始まれば免税事業者(年間売上が1,000万円以下規模)は現行のように消費税を上乗せした請求書や領収書を発行することができなくなります。
それは、逆にお金を払う側からすれば、例えば3,240円(1,620円×2人)のランチが交際費(取引先との食事など)に該当するなら、今までなら240円分は消費税の納付額が安くなる要素だったのに、相手が免税事業者なら消費税の納付額を安くする要素にならない、つまり「払いっぱなし」ということです。
ですので、インボイス制度が実施されれば、免税事業者は上記ランチを1,500円に値下げするか、届出をしてあえて課税事業者になって適格請求書等(消費税を上乗せした請求書等)を発行して1,620円で提供するか、でないと取引を敬遠される場合が出てくると思います。
ですが、カフェのランチの場合は「経費にしたいから」ということで領収書を求められることは少なめの業種かなと思います。
経費など関係ない個人のお客さんからしたら、インボイス制度が実施されたところで消費税の申告義務はないので、1,620円払って120円が後で返ってくることはありません。それなら1,500円に値下げしてもらう方がありがたいでしょうね。
同じように相手が免税事業者の場合、ランチが1,500円でも1,620円でもまずはその金額が出ていきます。
が、上記の個人のお客さんと違う点は法人税(又は所得税)です。
1,620円を支払った場合は1,500円の場合より経費が120円多い分、それに対する法人税(実効税率が約30%とすると36円)又は所得税(例えば税率が20%の人だとすると24円)が安くなりますが、出て行くキャッシュの一部しか税金が安くならないことを考えるとやっぱり1,500円に値下げしてもらう方がありがたいでしょうね。
まぁもともと、カフェのランチなど他と全く同じ製品や品質でないものは、他と比較して消費税が上乗せされているから、されていないからという観点で選択するものではないでしょうね。
なお、上記の例はすべて現行8%で考えています。これらの話の前に、まずは税率変更のためのレジや請求書システムなどの対応が先ですね。
場合によっては補助金なども使えますので、お早めにご準備を。
ちなみに、上でお話しした簡易課税制度はインボイス制度実施で見直される予定のようです。
選択肢は多い方が有利ですし、廃止ではなく存続されるなら歓迎です。