お勤めの方が所得税を安くするには?

確定申告時期ではありませんが、確定申告時期に対策をするのでは遅いものもありますので、お勤めの方ができる節税の話をしたいと思います。

所得税の仕組み

所得税は、何かしらの収入がある人が払う税金です。

下の画像は「平成」表記の確定申告書ですが、来年3/15期限の確定申告書は「令和」になっているのでしょうか。

確定申告書

確定申告書の左半分で下記①~③を埋めます。

①収入金額等……給与や不動産の収入など。その収入に対する控除や経費を引く前の総額です。

②所得金額……その収入に対する控除や経費を引いたあとの金額です。

③所得から差し引かれる金額(所得控除。この金額が丸々税金が安くなるわけではありません。この金額にその人の税率を掛けた金額が安くなります。)……②から引くことができる控除。雑損控除から基礎控除まで、決まった項目です。

そして確定申告書の右半分で下記④を計算して1年間の所得税を確定させます。

④税金の計算……「②-③」から配当控除や住宅ローン控除(税額控除。この金額が丸々税金が安くなります。)や予定納税(一定の人が課される前払いの所得税)を引いて計算します。

節税とは

簡単に言うと、②の所得金額を減らすか、③の所得控除額を増やすか、④の税額控除額を増やすか、これらの3要素です。

②に関しては、事業所得や不動産所得がマイナスになる場合などです。(申告分離課税の所得があるケースは、今回は省きます。)

お勤めがメインの方で事業所得がある方は稀でしょうし、不動産所得も節税のためだけにわざわざ投資用マンションを購入することはあまりオススメできませんが、もしお持ちの方は損益(実際の現金収支とは異なります。)がマイナスになれば給与と相殺して節税できます。

その際、現金収支がマイナスでも「損益がマイナスであることによって節税できる金額>現金収支のマイナス」であればまだマシですが、節税額が現金収支より小さい場合または、節税どころか増税な上に現金収支もマイナスの場合なんかはさらによろしくありません。

相続等で受け継いだ物件や駐車場を賃貸する場合は、物件の築年数がある程度いっていれば減価償却も終わっているかもしれませんし(=あまり経費がない)、駐車場のアスファルト舗装など簡易なものの減価償却費が賃貸料を上回ることは稀です。

つまり損益でプラスが出て増税です。(現金収支はプラスになるでしょうけれど。)

他にも、満期保険金があったりちょっとした収入があった場合なども、プラスしないといけず増税になることもあります。

ということで、②のマイナスはコントロールがほぼできません。

③に関しては下記の控除があります。

・雑損控除…… 年末調整で考慮できず、確定申告をするしかありません。
災害や盗難や横領(今日のニュースでありましたね…)による損失(詐欺や恐喝は対象外ですので、振り込め詐欺には残念ながら適用されません。)があった場合には、一定の条件のもとで一定の金額が対象です。損失額丸々ではありません。

・医療費控除……年末調整で考慮できず、確定申告をするしかありません。
【従来の医療費控除】医療費控除については以前のブログで少し触れましたが、②で一定の所得がある方は基本的に医療費総額(家族全員分合算OKです。)から10万円を引いた金額(最高200万円)または【セルフメディケーション税制】自分でドラッグストア等で購入した対象医薬品等の金額から1万2千円を引いた金額(最高8万8千円)、のいずれかの金額です。

・社会保険料控除……基本は年末調整で考慮済の給与天引きの健康保険、厚生年金または国民健康保険、国民年金。家族の国民健康保険や国民年金も入れることができ、お勤めが変わった際の、次の職場までのつなぎの国民健康保険や国民年金の負担があった場合も忘れずに。

・小規模企業共済掛金控除……【小規模企業共済】基本は年末調整で考慮済。会社の役員などの場合は一定の要件のもと加入対象になりますが、そうでないお勤めの方が加入対象になることは稀です。上記の不動産収入がある場合でも、お勤めをされながらだと加入できないと書かれています。なお、もしお勤めをされていなくて不動産収入だけの方は、基本的には事業的規模かどうかに関わらず加入できます。掛金が丸々所得控除になります。
【iDeCo】 基本は年末調整で考慮済。個人型確定拠出年金。自分で毎月一定額を積み立てて、60歳以降に受け取る年金を運用します。こちらも掛金が丸々所得控除になります。
これらは選択ではなく、合算した金額が所得控除の金額となります。いずれも税金の面でとても優遇があるので、もし加入対象であれば考えてみられてもいいと思います。小規模企業共済とiDeCoは後日のブログで詳しくお話ししたいなと思っています。

・生命保険料控除……基本は年末調整で考慮済。 保険料丸々が所得控除の金額にはなりません。

・地震保険料控除……基本は年末調整で考慮済。 保険料丸々が所得控除の金額になることもありますが、保険の種類(契約時期)にもよりますし、上限額もあります。

・寄附金控除……年末調整で考慮できず、確定申告をするしかありません。6月から規制が始まる、ふるさと納税などが有名です。対象の自治体や認定NPO法人などに対して寄附をした場合に、入れられます。ただし、寄附額丸々ではなく、寄附をした相手先によって所得控除の額の算式が変わります。ふるさと納税が多いかと思いますが、それ以外でも、赤い羽根共同募金やユニセフ協会なども対象です。寄附金控除を受けるためには、その機関が発行する寄附金の受領証などを確定申告書に添付しなければなりませんが、電子申告の場合には所定の入力をすれば添付が省略できます。

寄附金控除の対象になる寄附は、下の画像のようなパンフレットまたは受領証などにどの寄附金に該当するか説明書きがあることが多いです。

寄附金の説明

・寡婦、寡夫控除……基本は年末調整で考慮済。女性と男性とで要件が異なります。配偶者と離婚、死別された場合は対象にならないか確認してみましょう。

・勤労学生、障害者控除……基本は年末調整で考慮済。障害は程度によって金額が異なります。

・配偶者(特別)控除……基本は年末調整で考慮済。平成30年から要件が変更されました。103万円の壁と言われていたものが150万円に引き上げられましたが、依然として社会保険の130万円の壁が大きく、そちらを重視されてその範囲内でおさめる方も多いです。また、年末調整の段階でお勤め先に申告した配偶者の所得に誤りがあったり、その配偶者がのちに確定申告をしたことで(例えば株の特定口座のものを損失繰越のためにあえて確定申告をするケースなどあります。)配偶者の所得が変わって配偶者(特別)控除の額が年末調整時と変わってしまった場合、確定申告時には年末調整のときの配偶者(特別)控除の額ではなく訂正後の額を入れなければ、のちにほぼ確実に税務署から修正を求められて追加で税金を払うことになります。

・扶養控除……基本は年末調整で考慮済。同居でなくとも、離れてくらす親や一人暮らしの子供に仕送りをしているなど、一定の要件を満たせば入れられることがあります。

・基礎控除……年末調整で考慮済。2020年分の所得税から金額が48万円になり所得制限も加わりますが、来年の3/15が期限の確定申告(2019年分)は従来通り38万円、所得制限なしです。

以上、③の所得控除が一番、手を打ちやすいところかなと思います。

④に関しては、配当控除(年末調整で考慮できず、確定申告をするしかありません。)と住宅ローン控除(基本は年末調整で考慮済 )です。

株の譲渡や配当などがある方は、NISA口座、特定口座(源泉徴収あり、源泉徴収なし)、一般口座などなどあります。このうち、NISA口座に関しては非課税なので確定申告はできません。特定口座の源泉徴収ありに関しては確定申告は任意、特定口座の源泉徴収なしと一般口座は確定申告が必要です。

確定申告となった場合には、一定の配当については総合課税か分離課税か選択でき、総合課税を選択した場合に配当控除が受けられます。

住宅ローン控除に関しては、引ききれなかった金額は住民税の方から引いてくれますが、住民税から引ける住宅ローン控除の額には上限があります。

住宅ローン控除の額が十分にある方で、ふるさと納税を限度額いっぱいまでしてしまった場合、寄附金控除の方が住宅ローン控除より先に適用されて住宅ローン控除が住民税に押し出され、その結果上限に引っかかって引ききれなかった、となると残念ですので、住宅ローン控除が大きい方はふるさと納税の限度額を試算するときはその要素も考慮にいれて試算した方が良いですね。

結論としては、③の医療費控除小規模企業共済(iDeco)寄附金控除(ふるさと納税など)と④の住宅ローン控除をフルに受けられるようにふるさと納税の金額に注意すること、が節税を考える上で多くの方が対象となってくる要素かなと思います。

細かい部分はだいぶ省いていますので、もっと詳しく知りたい方はぜひ調べてみてくださいね。